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若者ことば“み”から読み解く“現代感”

コミュニケーションデザイン局 船木俊作

 

「やばい」「うれしい」ではなく「やばみ」「うれしみ」?

 

去年あたりから、SNS上で若者たちが“ある言葉”を使っているのが目に付きました。いわゆる「若者ことば」の類になるのですが、「やばみ」「うれしみ」などの感情を表す形容詞の語尾を「み」に変換して、投稿する事象です。

 

Twitterで「やばみ」「うれしみ」と投稿された過去1年間のツイートを計算してみると、昨年11月中旬、今年6月中旬に「やばみ」の投稿数が爆発的に伸びています。近辺のツイートを分析してみると、11月中旬は写真大喜利のような投稿で「やばみ」のワードが入ったものが15万いいねを集めていることがわかりました。

 

ブームリサーチ「Twitterキーワード検索“やばみ”“うれしみ”(2017年8月~2018年8月)」の検索結果

 

 

若者ことば「み」はなぜ生まれたのか?

 

まず、「み」を文法の観点から考えてみましょう。「み」は主に形容詞のあとに続いて名詞を作る動きを持つ“接尾辞”と呼ばれるもので、「悲しい」を名詞にした「悲しみ」、「うまい」を名詞にした「うまみ」などが代表的な変容例になります。同様に、接尾辞「さ」を用いると「悲しい」は「悲しさ」へ、「うまい」は「うまさ」へと名詞に変貌を遂げるといった仕組みです。

 

 

2018年6月、若者ことばの「み」が生まれた背景について、文法研究者の茂木俊伸さんがこの事象について研究結果を発表しました。そこに書かれていた内容を要約すると「自分との一定の距離を置きながらも実感を伴っている感情として、従来なかった接尾辞“み”を使った名詞が生まれた」と論じられています。

 

※研究結果の詳細はこちらからご覧いただけます。

 

 

若者ことばに潜む“彼・彼女の気持ち”

 

ここからは独自の見解を踏まえて、もう少し噛み砕いて事象の背景を考えていきたいと思います。
SNSはここ数年で世間に広く浸透していきました。同時にSNSリテラシーが高まっていき、SNSにアップしてもいいこと・してはいけないことの肌感覚が私たちだけでなく、若者たちにも身についていったように感じます。
特に若者たちを中心に、SNSで自分をよりよく見せたいといった感情が芽生えたり、せめてSNSだけでは“こうでありたい”自分を演じたりする行動が目立つようになりました。その結果、“SNSの中の自分”と“本当の自分”に大きな距離が生じていってしまうことになるのです。

 

 

Twitterのような、自分の気持ちを吐露するのに適したSNSでは、その距離感を表すかのように、自分の感情を客観視し、ある種の“ジョーク”として見せる現象が起こっていきます。編集・加工した写真をアップしたり、動画アプリ「TikTok」を使用して、充実した青春ぶりを友達に見せていったり―――そんな自分の行動を鳥の目で眺めている感情、それこそが若者ことばの「み」なのです。

 

 

若者ことばはいつだって“難解”だった

 

若者が新聞を読まなくなったり、本を読まなくなったというのは、以前から指摘されている事象ですが、いわゆる一般的な日本語表現に対してなじみのない“若者らしい日本語感覚”が、新たな言語(げんご)を生む。それが今回の「み」に代表される事例なのかもしれません。
そこで、現在よく使われている若者ことばを以下にまとめてみました。若者にチューニングを合わせるためにも一度、読解にチャレンジしてみてください。きっと「そういうことか!」と、はたとひざを打つ意味が多いと思います。

 

 

若者ことば、それは“時代の映し鏡”

 

かつて若者ことばとして流行した「やばい」は、牢屋や監獄を意味する「厄場(やば)」に由来していると言われています。その「やばい」は時を超え、危機感を覚える意味だけではなく、「魅力的」「すごくいい」といった意味を持ち合わせ、さらには「やばみ」といった客観的な視点を持った名詞へと変貌していきました。
若者ことば。それは時代に合わせて誕生に、時代に合わせて意味やかたちを変えていくことば―――その背景に潜む若者たちのインサイトにこそ、ビジネスのヒントになるようなアイデアが潜んでいるのではないでしょうか?
若者向け商品のネーミング、若者向けサービスのローンチなど、いろいろなシーンで若者の感性が必要になってくると思います。そんなときはぜひとも、“若者ことば”を使ってリサーチを進めてみてください。ことばに付随する情報(SNS投稿など)から、ターゲットが今、考えていることが見えてくるでしょう。

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